「AIが便利らしいことは分かる。でも、うちの仕事で何を頼めるのだろう」

「新しい仕組みを覚える時間も、専任の担当者を置く余裕もない」

食品会社や飲食店では、商品づくり、仕込み、接客、営業など、目の前の仕事が優先です。AIの説明を聞いても、専門用語ばかりでは自分たちの仕事に置き換えにくいのではないでしょうか。

そこでインテグロースは、社内の共有メモ置き場であるObsidianに残した実際の作業記録を振り返りました。対象は約2か月の121件。そのうち、食品・飲食に関する仕事は74件です。

この記事でいう「AI秘書」とは、社内の資料をもとに、情報整理、下書き、集計、確認作業を、人の確認のもとで進めるAIの使い方を指します。

先に結論をお伝えすると、AIは味見も接客もできません。しかし、店や会社の裏側にある「読む・まとめる・下書きする・見直す」は手伝えます。

この記事でわかること

  • インテグロースの作業記録121件を、どのように数えたか
  • 食品・飲食の仕事でAIに任せやすかったこと
  • AIに任せず、人が確かめて決めること
  • 小さな会社や店舗が、最初に試しやすい仕事

まず結論|AIは「料理人」ではなく、裏方の補助役

AIは、料理人や店長、商品担当者の代わりではありません。

得意なのは、仕事に必要な材料を読み、見やすく整え、最初の案を用意することです。

例えば、会議メモから次の作業を抜き出す。商品資料から紹介文の下書きを作る。毎月の数字を同じ形にそろえる。過去に直した点を確認表へ残す。こうした裏方の仕事です。

資料や数字を渡す AIが下準備する 人が確認して決める
AIだけで完結させず、最後は商品や店、事業を知る人が確認します。

大切なのは、AIへ「全部やって」と頼むことではありません。AIが下準備するところと、人が責任を持つところを先に分けることです。

121件をどう数えたのか

この記事は、一般的なAI活用論ではなく、インテグロース自身の作業記録をもとにしています。

対象期間は、2026年7月11日から9月2日までです。実際に記録がある28日間のうち、AIを使った一つの作業記録を「1件」と数えました。この記事の分析を始めた後に作った記録は、集計へ加えていません。

同じ仕事の修正や再確認も、それぞれ別の記録です。したがって、121社を支援した、121個の成果を出した、121時間を減らした、という意味ではありません。

INTEGROWTH WORK RECORDS

約2か月の作業記録を振り返りました

121 記録された作業
28 実際に記録がある日
74 食品・飲食に関する作業
全体の61.2%が食品・飲食に関する仕事

食品、飲料、飲食店、食の催事、食品のネット販売、食に特化したサービスを主な対象とする作業を数えました。

  • 食品・飲食74件
  • 会社共通の仕事12件
  • 食以外・個人用途35件
1件は一つの作業記録です。食品・飲食業界全体の平均ではなく、インテグロース社内の記録です。

さらに全121件を、仕事の主な目的が「つくる・売る準備・回す・残す」のどれかで、一件ずつ分類しました。

121件の半分は、作った後の「運用」と「知識化」だった

分類結果は、「つくる」40件、「売る準備」20件、「回す」42件、「残す」19件でした。

WHAT AI HELPED WITH

121件を主な目的で分けた結果

棒の長さは、最も多い42件を基準にしています。

つくる 40件 紹介ページ、記事、画像、動画など
売る準備 20件 提案資料、販売方法、目標数字の整理など
回す 42件 数字の集計、確認、修正、見直しなど
残す 19件 手順書、確認表、過去事例の整理など
今回の発見 「回す+残す」が61件。全体の50.4%でした。
全121件を主目的で手作業分類。複数の役割がある記録も、主な目的を一つだけ付けました。

AIというと、文章や画像を大量に作る使い方が注目されがちです。しかし、主目的を「回す」または「残す」と分類した記録は61件あり、全体の半分を占めました。

ここでいう「回す」は、公開後の数字をまとめる、間違いを探す、表示を直すといった日々の運用です。「残す」は、人が直した点を手順書や確認表へ変え、次回も使える形にすることです。

インテグロースの記録から見えたのは、AIの役割が「早く作る」だけではないことでした。作った後の確認と改善を続け、そこで得た注意点を次の仕事へつなぐ。この地味な部分にも、AI秘書は入りやすかったのです。

食品・飲食の仕事で任せやすかった4つ

ここからは、74件の食品・飲食に関する記録を含む実務ログで、実際に何を任せていたのかを紹介します。

1.散らばった情報を整理する

商品、店舗、取引先、販売、発信などの情報は、会議メモや表、過去の資料へ分かれて残りがちです。

AIには、それらを読み、次のように分ける仕事を任せました。

  • 決まったこと
  • まだ確認が必要なこと
  • 次に行うこと
  • 誰が確認するか

紹介ページを作る際には、情報を「事実として使える」「仮の案」「まだ分からない」「使ってはいけない」に分けています。分からない価格、原材料、保存方法などを想像で埋めず、確認事項として残すためです。

2.文章や販促物の下書きを作る

商品紹介、店舗紹介、SNS投稿、販売ページ、提案資料などの最初の案を作る仕事です。

商品資料と過去の良い事例があれば、何もない状態から始めるより、担当者が比較・修正できる案を早く用意できます。

例えば食品の販売ページでは、商品の魅力だけでなく、内容量、配送、保存、よくある質問など、購入前の不安を順に整理する必要があります。詳しくは、過去記事の食品ECのLPはどう作る?でも解説しています。

AIが用意するのは、あくまで判断材料となる下書きです。「本当においしそうに感じるか」「その会社らしい言葉か」は、人が整えます。

3.毎月の数字と表示を見直す

SNSやホームページの数字を同じ形にそろえ、前月と比べる。元の画面と資料を照らし合わせ、入力のずれを探す。公開ページをスマートフォン、タブレット、パソコンで見て、読みにくい場所を洗い出す。こうした確認にもAIを使いました。

数字を並べるところまではAIに任せられます。一方で、「来月は販売と採用のどちらを優先するか」「どの商品を強く見せるか」は、人が決めます。

毎月どの数字を見ればよいか迷う場合は、食品メーカーのInstagram運用ガイドも参考になります。

4.直した理由を、次回の手順へ残す

人が直した内容を確認表や手順書へ変え、同じ失敗を繰り返さないようにする仕事です。

インテグロースのある標準化作業では、食品・飲食の制作事例17件を横断確認し、100点満点の確認表を作りました。スマートフォン、タブレット、パソコンで確認すること、事実や画像の扱いに重大な問題がないことなどを、完成条件として残しています。

良い完成品だけでなく、どこを直したか、なぜ直したかまで社内の共有メモへ残す。それが、次の仕事でAIへ渡せる会社独自の材料になります。

AIへ任せず、人が確かめて決めること

AIが下準備できても、食や商売に関するすべてを決められるわけではありません。インテグロースの運用では、次のように役割を分けています。

AI AND HUMAN ROLES

AIが準備し、人が確かめ、最後は人が決める

AIに任せやすい 下準備する
  • 情報を探して整理する
  • 文章や表の下書きを作る
  • 数字や表示を確認する
  • 注意点を記録する
人が必ず確認 事実を確かめる
  • 商品名、価格、販売期間
  • 原材料やアレルギー情報
  • 営業時間や予約条件
  • 写真や文章の利用範囲
人が決める 商売を判断する
  • 味や商品の魅力をどう伝えるか
  • 会社や店らしい表現か
  • 何を優先して売るか
  • 送信・公開してよいか
当社では、事実、安全に関わる表示、ブランド、送信・公開の判断を人の確認領域としています。

AIは、資料にない内容でも自然な文章に見せることがあります。価格、原材料、アレルギー、保存方法、営業時間などは、元の資料へ戻って人が確認します。分からないことは、確認事項として残します。

また、味、香り、食感、盛り付け、接客の心地よさは、人が実際に確かめるものです。AIは紹介文を提案できますが、その表現が商品に合うかは判断できません。

作った文章の送信や公開も、人が承認します。役割分担をさらに考えたい方は、飲食店のSNS運用を無理なく続ける方法もご覧ください。

最初の一仕事を選ぶチェックリスト

121件のログ本文に繰り返し現れた条件を定性的に整理すると、AIを試しやすい仕事には、次の共通点がありました。

  • 毎週または毎月、同じように繰り返している
  • 元になるメモ、商品資料、数字、過去の完成例がある
  • AIへ任せる範囲が、整理、比較、下書き、確認のどれかである
  • 人が確認する事実と、最後に決める人がはっきりしている
  • 外へ送る、または公開する前に、人が止めて確認できる

小さな会社や店舗なら、大きな仕組みを入れる前に、次のどれか一つから始められます。

会議後の整理

個人情報や秘密情報を除いた会議メモから、「決まったこと」「次に行うこと」「確認が必要なこと」を分けます。

商品・店舗紹介の下書き

最新の商品資料や店舗情報をもとに、SNS投稿や商品紹介文の最初の案を作ります。価格、販売期間、原材料、営業時間は、公開前に人が元資料と照らし合わせます。

毎月の数字の整理

売上、SNS、ホームページなど、毎月見ている数字を同じ表にまとめます。最初は高度な分析ではなく、「前月から大きく変わったもの」「確認が必要な数字」を見つけるだけでも十分です。

始める前に、「元の資料」「完成の状態」「確認する人」「外へ出す人」の4つを紙へ書くだけでも、任せる範囲が分かりやすくなります。

よくある質問

普通の生成AIチャットと、AI秘書は何が違いますか?

この記事では、単発で質問へ答えるだけでなく、会社の資料や過去の判断をもとに、繰り返しの仕事を人の確認下で支える使い方を「AI秘書」と呼んでいます。

顧客情報や会社の資料を、そのまま入れてよいですか?

最初からそのまま入れるのはおすすめしません。使うサービスの規約、保存先、閲覧できる人、社内ルールを確認し、初回は個人情報や秘密情報を除いた資料で試してください。

小さな飲食店でも始められますか?

始められます。専用の担当者を置く前に、会議メモの整理や紹介文の下書きなど、一人が確認できる小さな仕事を一つ選ぶ方法があります。

SNS投稿や案内を、自動で送信・公開できますか?

仕組みとして可能な場合でも、最初から自動公開にはしません。古い営業時間や誤った価格を出さないよう、人が内容を確認し、承認してから外へ出す運用が安全です。

どのくらい時間や費用を減らせますか?

今回の121件では、時間や費用を同じ条件で測っていないため、数字では答えられません。まず4週間ほど、作業時間、手戻り回数、人が確認した時間を記録すると、自社に合うか判断しやすくなります。

今回の数字だけでは分からないこと

今回の121件は、インテグロース自身の作業記録です。食品・飲食業界全体の平均ではありません。

また、記録は8月末に多く、同じ案件の修正や確認も複数含まれます。対象業務も、販売・発信、ホームページやSNS、分析、手順づくりが中心で、製造現場や調理工程、レシピ判断までを調べたものではありません。

この数字だけでは、次のことも分かりません。

  • 何時間短縮できたか
  • 売上がいくら増えたか
  • 何人分の仕事を代わりに行ったか
  • AIだけで品質が上がったか

今回分かったのは、AIの売上効果ではなく、どのような仕事なら、AIと人が分担して実際に進められたかです。

今後は、作業時間、手戻り回数、人が確認した時間、実際に利用できた案の割合も記録し、続けて検証します。

まとめ|食の価値を決めるのは人、下準備を続けるのがAI

121件の作業記録から見えたポイントは、次のとおりです。

  • 全121件のうち、食品・飲食に関する仕事は74件だった
  • 主目的を「回す」「残す」とした仕事が61件で、全体の50.4%だった
  • AIには、情報整理、下書き、数字や表示の確認、注意点の記録を任せやすかった
  • 当社運用では、事実、安全に関わる表示、ブランド、送信・公開を人が確認・決定した
  • 元資料、完成例、確認する人がある小さな仕事から始めやすかった

AIを使うために、難しい言葉を覚えることから始める必要はありません。

まずは、今週もう一度行った仕事を一つ選び、「元の資料」「完成の状態」「確認する人」「外へ出す人」を書き出してみてください。

インテグロースのOctopus AIでは、AI導入を前提にせず、現在の仕事を「AIが下準備する」「人が確認する」「人が決める」に分けるところから支援しています。

自社でAIへ任せられる仕事を整理する