野菜炒めが皿の上で水っぽくなる。レシピどおりに火を通した鶏むね肉がパサパサになる。揚げ物は、油の処理や掃除まで考えると作る前に諦めてしまう。

こうした声を見ていると、「工程を一つ減らす便利な食品を作ればよい」と考えたくなります。しかし、実際の不満はそれほど単純ではありませんでした。

インテグロースは2026年8月、社内のObsidianに残した料理悩みリサーチを読み直しました。Instagram投稿、YouTubeコメント、Yahoo!知恵袋の質問、インターネット通販の中評価レビューを、4媒体で延べ220件一次確認しています。

先に結論をお伝えすると、今回の調査で見えた商品機会は、単なる「便利」ではなく、水分、火加減、食材の量が少しずれても、失敗しにくい食品でした。

この記事では、この失敗しにくさを「許容幅」と呼びます。難しい言葉に見えますが、意味は簡単です。レシピどおりにぴったり作れなくても、おいしい範囲に収まりやすい余裕のことです。

なお、220件には、検索語と内容がずれたものや重複も含まれます。220件すべてを「料理に失敗した人の声」として扱ったわけではなく、売上データでもありません。この記事で示すのは「必ず売れる法則」ではなく、食品メーカーが次の試作品を考えるための仮説です。

この記事でわかること

  • 220件を何から、どのように数えたのか
  • 料理の失敗で繰り返し見つかった5つの悩み
  • 2〜4つ星レビュー40件に残っていた「便利なのに惜しい」点
  • 「工程を減らす」だけで終わらない食品の商品条件
  • 発売前に、小さく確かめる方法

4媒体・延べ220件をどう一次確認したのか

調査対象は、日本の家庭料理、とくに一人暮らしから少人数世帯の悩みです。2026年8月8日時点で、次の4種類を確認しました。

INTEGROWTH ORIGINAL RESEARCH

料理の悩みと既存商品の不満を、4つの場所から一次確認しました

媒体ごとに数え方が違うため、同じ種類のデータとして単純比較はしていません。

  1. INSTAGRAM 48投稿 料理関連4アカウントから各12投稿
  2. YOUTUBE 110コメント 5つの検索語、10動画
  3. Q&A 22件 Yahoo!知恵袋の質問
  4. EC REVIEW 40件 2〜4つ星の商品レビュー
  5. TOTAL 220件 今回の一次確認数
Instagramの表示コメント38件も補助的に確認しましたが、220件には足していません。

延べ220件の内訳は、Instagram 48投稿、YouTube 110コメント行、Yahoo!知恵袋22件、インターネット通販の2〜4つ星レビュー40件です。Instagramで表示された38コメントは、分量や保存などの疑問を知る補助材料として別に確認しました。

YouTubeの110コメントには、同じ動画が別の検索語で現れた重複が20件ありました。さらに、検索した悩みと内容がずれた動画のコメントを除くと、個別の悩みを分類できたのは49件です。少ない件数を無理に大きく見せないため、元の取得数と実際に分類した数を分けています。

中評価レビュー40件は、当時のObsidian集約メモ上で、楽天市場22件、Yahoo!ショッピング15件、LOHACO 3件です。Amazonは本文を安定して確認できなかったため、今回は0件としました。Threadsも、ログインせずに十分な検索結果を確認できなかったため対象外です。

YouTubeとYahoo!知恵袋は行単位の記録から件数を再確認できました。一方、ECレビューは選定した40件の行単位台帳が残っていないため、今回の監査では個別の採否まで再現できませんでした。そこで、レビューの数値は当時のObsidian集約結果として掲載し、この再現性の不足自体も調査の限界として明記しています。

Instagramの48投稿はコメントを読むための文脈であり、48件すべてが失敗告白ではありません。YouTubeも110コメント行すべてを悩みの件数として数えず、重複と対象外を除いた範囲で分類しました。つまり、全220件を同じ方法で分類した調査ではありません。

この調査は、世の中全体の割合を推計するものではありません。検索上位や閲覧できた公開情報から、同じ失敗がどう繰り返され、今の対処に何が残っているかを探索したものです。

複数媒体から見えた、料理の5つのつまずき

媒体をまたいで読むと、料理の悩みは大きく5つに整理できました。

REPEATED COOKING PAINS

失敗そのものより、その後に増える手間が重い

  1. 01 水っぽい 別炒め、拭き取り、水分飛ばしが増える
  2. 02 肉が硬い 加熱しすぎと生焼け不安が同時に起きる
  3. 03 油がはねる 掃除や処理を考え、調理自体を避ける
  4. 04 再加熱で崩れる 時短と引き換えに食感のむらが出る
  5. 05 一人分が難しい 分量、保存、使い切り、味の固定に迷う
5分類の件数を競わせるのではなく、失敗から回避行動までを一続きで読みました。

1.水分を制御できず、焼くつもりが蒸し料理になる

「水っぽい」「汁だく」「焼き色がつかない」「味が薄まる」という悩みです。

今の対処は、少量ずつ炒める、肉と野菜を別に炒める、キッチンペーパーで水分を取る、水分が飛ぶまで加熱する、水溶き片栗粉を別容器で作る、といったものです。

どれも一応は対処できます。しかし、洗い物や時間が増えます。強火や別炒めを試しても皿に水が残ったという質問もあり、「正しい手順を知らない」だけでは片づけにくい悩みでした。

2.肉のパサつきと生焼けの不安が同時に起きる

肉は、火を通しすぎれば硬くなり、早く止めれば生焼けが心配です。

今回見た公開コメントでは、柔らかくする方法だけでなく、長い漬け時間、休ませる時間、中心温度の確認まで負担として現れていました。鶏むね肉からもも肉へ変える、そもそも調理を避けるという回避もあります。

食品に求められるのは「柔らかくする成分」だけではありません。多少の肉量や加熱時間の違いがあっても、味が濃くなりすぎず、結果が安定することまで含まれます。

3.油はねは、失敗する前に料理をやめさせる

油はねの問題は、でき上がった料理の品質だけではありません。熱さへの怖さ、コンロ周りの掃除、残った油の処理まで含めて、揚げ物を作らない理由になります。

油はねガードなどの既存品にも、料理が見えにくい、細かな飛沫が抜ける、置き場所に困る、付着した油で別の場所が汚れるという不満がありました。一つの問題を減らしても、新しい面倒が増えれば「便利」は続きません。

4.冷凍・再加熱が、便利さと食感の交換になる

冷凍ご飯用の容器は保存を楽にします。一方で中評価レビューには、冷たい部分が残る、一部が乾燥して硬くなる、熱い結露が出る、容器を重ねにくいという不満がありました。

時間は短くなっても、食感のむらや収納の悩みを利用者が引き受けています。ここでも「使えば必ず便利」ではなく、電子レンジの違いやご飯の量のずれをどこまで吸収できるかが重要です。

5.分量・保存・味の固定が、一人分の自炊を重くする

Instagramの補助確認では、「何グラムか」「何日保存できるか」「別の材料でもよいか」「動画と説明文のどちらが正しいか」といった質問が目立ちました。

Yahoo!知恵袋では、大容量の調味料を使い切れない、予定変更で食材を捨てる、作り置きをまだ食べてよいか判断できない、といった生活全体の悩みも見つかりました。

味つきのキューブや素は計量を減らせます。しかし、味が濃い、香りが好みに合わない、薄めると便利さが消えるという不満もあります。一人分には、味を決め切ることより、少量で自分の味付けを邪魔しないことが合う場合があります。

2〜4つ星レビュー40件が教えた「便利なのに惜しい」点

高評価レビューは、何が喜ばれたかを知るのに役立ちます。低評価レビューは、大きな欠点を見つけやすい情報です。

今回あえて2〜4つ星を見たのは、良さを認めながら「ただし、ここが惜しい」と感じた人の声に、乗り換えの条件が表れやすいと考えたためです。

40件を一件ずつ読み、一つのレビューに複数の不満があれば複数の印を付けました。

40 MID-RATING REVIEWS

既存品の「便利」を打ち消していた5つの穴

一つのレビューへ複数の印を付けたため、件数の合計は40を超えます。

条件の補正 17件 水量、使用量、火力、時間、機種、食材差を利用者が手探りする
別の面倒 15件 洗いにくさ、臭い、置き場、結露、傷、破損などが増える
生活とのずれ 8件 容量、収納、替え部品、買える場所が生活に合わない
価格・消耗 5件 得られる便利さに対して高く感じる、減りが早い
味の固定 5件 塩味や香りが強く、自分の料理へ合わせにくい
最大の発見 40件中17件は、商品を使った後も利用者が条件を調整していました。
インテグロースによる2〜4つ星レビュー40件の複数タグ分類。市場全体の割合ではありません。

集約メモ上の5分類で最も多かったのは「使用者が条件を補正しないと成功しない」で、40件中17件、42.5%でした。次が「別の面倒や危険を生む」の15件、37.5%です。

商品が一工程を減らしても、利用者が水量、火力、時間を細かく調整しなければならない。洗う部品や収納場所が増える。その状態では、手間を別の場所へ移しただけになってしまいます。

「便利」と「失敗しにくい」は何が違うのか

「便利」は、多くの場合、作業の数や時間を減らす言葉です。「水に溶かさなくてよい」「漬け時間が短い」「電子レンジだけでよい」などが当てはまります。

もちろん、工程を減らす価値はあります。ただし、実際の台所では、食材の量も水分も、コンロや電子レンジの強さも毎回少しずつ違います。便利な手順が一つの条件でしか成功しなければ、利用者は結局こつを覚えなければなりません。

FROM CONVENIENCE TO TOLERANCE

工程を減らすだけでなく、少しのずれを商品側で受け止める

便利 一つの工程を減らす
  • 水溶きがいらない
  • 漬け時間を短くする
  • 電子レンジだけで調理する
残る負担 人が条件を合わせる
  • 量や水分を微調整する
  • 火力や時間を見極める
  • 洗浄や収納の手間を引き受ける
許容幅 多少ずれても成功しやすい
  • 食材差を吸収する
  • 入れすぎても急に崩れない
  • 元の味や片付けを邪魔しない
許容幅とは、上手な人の技を再現させるのではなく、普通の台所で失敗しにくくする設計です。

今回の調査だけで、「便利より売れる」ことは証明できません。ただし商品企画として目指したいのは、便利さを捨てることではなく、便利にしたうえで、利用者へ残る調整や不安まで減らすことです。

調査から考えた、食品企画の5つの仮説

ここでいう「売れる」は、調査だけで証明された売上効果ではなく、試作する価値が高い条件という意味です。

1.ぼんやりした時短ではなく、具体的な失敗を解決する

「料理を楽にする」では、使う場面が分かりません。「野菜炒めの水分が出た最後」「鶏むね肉を焼く前」など、失敗が起きる瞬間まで絞ります。

利用者が「これは自分の失敗だ」と分かれば、商品説明も試作評価も具体的になります。

2.失敗する前だけでなく、困った後にも使える

事前の漬け込みや下処理は、忘れると使えません。料理の最後に気づいても戻せる商品は、予定どおりに進まない日の助けになります。

今回の社内検討では、「味を大きく変えず、最後に水分だけを整える食品」を有望な仮説としました。これは商品化の決定ではなく、まず試作品で確かめる案です。

3.量・水分・火加減のずれを受け止める

使用量を一点だけで示すのではなく、少し多い、少し少ないときにどうなるかを試します。肉の重さ、野菜の水分、加熱器具の違いでも確認します。

一番うまくできた一皿だけではなく、条件を変えても失敗しにくい範囲を広げることが、許容幅の設計です。

4.味、洗い物、収納という新しい面倒を増やさない

悩みを一つ解決しても、濃い味、別容器、分解洗浄、大きな保管場所が必要になれば、別の不満へ移ります。

食品なら、元の味を邪魔しにくい、少量で使い切れる、計量しやすいことも機能の一部です。パッケージと使い方を、味や成分と同じ段階から考えます。

5.効果を同じ条件で見せられる

便利さは言葉だけでも説明できますが、許容幅は実演のほうが伝わります。同じ材料、同じ量、同じ火力で作り、使った場合と使わない場合を比べます。

皿を傾けたときの水分、肉の断面、再加熱後の硬さなど、違いが目で分かる商品は、広告だけでなく開発中の確認にも使えます。

食品の魅力をインターネット上で伝える際は、食品ECのLPで写真と判断材料を組み立てる方法も参考にしてください。

食品メーカーが、小さく確かめる5ステップ

大量生産や大規模なアンケートの前に、次の順番で仮説を確かめられます。

  1. 自社商品と近い商品の2〜4つ星レビューを20〜40件集める
  2. 「便利だけれど」「よいけれど」の後に書かれた不満を分類する
  3. 最も繰り返す失敗に対し、条件を少しずつ変えた試作品を用意する
  4. 同じ材料、同じ撮影角度で、使う前後を短い動画にする
  5. 購入意向だけでなく、有料試用や少額の予約で支払う行動を確かめる

試作品の動画を見せるときは、「欲しいですか」だけで終わらせません。次の3点を確認します。

  • 何を解決する商品だと思ったか
  • 料理のどの時点で使うと思ったか
  • 今の対処をやめてまで使いたい理由があるか

Instagramは、悩みの数を数えるだけでなく、商品説明のどこで質問が出るかを確かめる場所として使えます。投稿での検証方法は、食品メーカーのInstagram運用ガイドでも紹介しています。

食の発信者に試作品を依頼する場合は、成功例だけを撮ってもらうのではなく、食材量や水分を変えた条件でも試してもらいます。日常の台所でどこまで失敗しにくいかが分かり、商品の説明にも使える材料が残ります。

よくある質問

一次確認した220件すべてが「料理に失敗した人」の声ですか?

いいえ。220件は調査で確認した投稿、コメント、質問、レビューの合計です。称賛、重複、検索意図とずれた内容も含むため、すべてを失敗件数として数えてはいません。悩みごとの分類では、対象外を除いています。

なぜ1つ星ではなく、2〜4つ星レビューを見るのですか?

良さを認めたうえで残った不満を見つけるためです。「便利だけれど、量の調整が難しい」のような声は、既存商品のどこを直せば乗り換え候補になるかを考える手掛かりになります。

レビューの件数が多ければ、市場も大きいと判断できますか?

判断できません。検索順位、動画の視聴者、レビューを書いた人には偏りがあります。今回の件数は、市場規模や発生率ではなく、悩みの構造を知るための材料です。市場規模は販売データなどで別に確認する必要があります。

SNSだけで商品企画を決めてもよいですか?

おすすめしません。SNSでは、映像で伝わりやすい失敗や人気投稿に声が偏ります。問い合わせ、店舗での会話、自社レビュー、返品理由、試食結果なども合わせて判断します。

料理の安全性もレビューから判断できますか?

判断できません。生焼け、保存、再加熱などの投稿は、「不安がある」という手掛かりに限って扱います。原材料、表示、保存条件、加熱条件、品質、安全性は、食品技術者や製造委託先と試験・確認してください。

この調査で分からないこと

今回の調査は、公開情報を検索上位から集めた小規模な探索調査です。無作為に選んだ人への調査ではなく、媒体ごとに取得条件も違います。

このため、次のことは220件だけでは分かりません。

  • それぞれの悩みが日本全体で何%の人に起きているか
  • どの悩みの市場規模が最も大きいか
  • 商品をいくらで、何人が買うか
  • 試作品が食品として安全に製造できるか
  • 新商品だけで売上が増えるか

また、レビュー分類はインテグロースが一件ずつ行ったもので、別の人が分類すると結果が変わる可能性があります。今後は、試作品の比較、利用者への聞き取り、実際の有料試用まで進めて仮説を更新します。

まとめ|消費者へ「上手に作る責任」を残さない

4媒体・延べ220件を一次確認して見えたのは、消費者が新しい料理の技を求めているとは限らない、ということでした。

  • 工程を減らしても、細かな調整が残れば便利さは弱くなる
  • 一つの悩みを減らしても、洗浄、収納、濃い味が増えれば続かない
  • 食材や加熱器具の違いを吸収する「許容幅」が商品価値になる
  • 失敗した後でも使え、効果を同条件で見せられると伝わりやすい
  • 投稿やレビューは答えではなく、試作品を作る順番を決める材料になる

食品開発で大切なのは、利用者へ完璧な手順を覚えてもらうことだけではありません。多少のずれを商品側で受け止め、「今日も失敗しなかった」と感じられる回数を増やすことです。

PRUMAMI(プルマミ)は、食領域に特化したインフルエンサーキャスティングサービスです。試作品の利用場面や確かめたい条件を整理し、商品と対象者に合う発信者を選定します。発売前後の発信を、単なる紹介ではなく、商品の理解と質問が集まる機会として設計したい場合にご相談ください。

食品の試作品をどう伝え、何を確かめるか相談する