同じ食品を撮影していても、動画の企画は一つとは限りません。忙しい朝に食べるのか、仕事の合間に一息つくのか、家族の夕食に添えるのか。生活の中でその食品が必要になる場面によって、先に伝えるべきことは変わります。
食品動画を企画するとき、商品の特徴を並べる前に考えたいのが、**「どんなときに、このカテゴリーの商品を思い出してほしいか」**です。その整理に使えるのが、カテゴリーエントリーポイント、略してCEPという考え方です。
インテグロースでも、季節や利用場面から発信テーマを整理した企画や、日常の使い方と映像・広告を対応させる提案を作ってきました。この記事では、その考え方を一商品の動画構成へ落とし込みます。
CEPは、商品カテゴリーを思い出すきっかけ
Ehrenberg-Bass Instituteは、CEPをカテゴリーの購入場面で生じる思考や状況から整理し、ブランドとの結び付きを考える方法を紹介しています。同研究所の説明では、買い手にとっての関連性や、その場面とブランドの結び付きも確認します。
食品なら、「夕食にもう一品欲しい」「仕事の合間に気分を切り替えたい」「人が集まる日に出すものを探している」といった場面が候補になります。時間や場所だけでなく、目的、気分、誰といるかも手掛かりです。
「30代の女性」のような人物像だけでは、撮る映像は決まりません。同じ人でも、朝と休日の夕方では求めることが違うからです。食べる瞬間だけでなく、売り場で選ぶ、買い置きをする、持ち帰るといった場面も含めて考えます。
自社の企画では、季節から生活の場面へ掘り下げる
当社の企画記録には、季節の変化と生活者の関心を結び付けて、発信テーマを整理したものがあります。ここで大切なのは、カレンダーに「春」「夏」と書くだけで終わらないことです。
たとえば「夏の商品を紹介する」だけなら、夏らしい背景で商品を撮る案になりがちです。一段掘り下げて、暑い日のどんな食事で使ってほしいのか、何を用意する負担を減らすのか、と考えると、必要な映像が変わります。
別の映像・広告の提案では、昼食、仕事帰りの持ち帰り、家庭の夕食、週末の集まりといった使い方を分け、見せる内容と移動先の情報を対応させました。これは企画段階の設計であり、その場面を選べば売上が伸びると検証した結果ではありません。
この整理から、撮影前に残したいのは次の一文です。
「誰が、どんな場面で、何をかなえるために、この食品を選ぶのか」
一文を具体化できれば、料理の寄りだけでよいのか、準備する手元や食卓全体も必要かを判断できます。
同じ冷凍スープを、三つの場面で撮ってみる
ここでは説明用に、温めて食べる冷凍スープを仮定します。実在する商品や顧客の企画を示すものではありません。
| 場面の仮説 | 伝えたい価値 | 冒頭で見せるもの | 続けて見せるもの |
|---|---|---|---|
| 忙しい朝、温かい一品を用意したい | 朝食に加えやすいこと | 朝の食卓に置かれる一杯 | 用意する工程と、パンなどとの組み合わせ |
| 仕事の合間の昼食に一品足したい | いつもの食事に足す使い方 | 昼食とスープを並べた場面 | 分量や食べる様子、商品の特徴 |
| 帰宅後、家族の夕食に汁物を添えたい | 夕食全体への取り入れ方 | 主菜・副菜と並ぶ食卓 | 必要な人数分を用意する流れ |
朝の動画で商品の製法から長く説明すると、視聴者が知りたい「今の朝食にどう使うか」へ届くまでに時間がかかるかもしれません。一方、週末に食事を楽しむ場面なら、素材や作り方の説明が選ぶ理由になる可能性があります。
どちらも、商品の事実は変えません。変えるのは、どの価値から伝え、何を映像で確かめてもらうかです。調理時間や人数分の目安は、実際の商品条件で確認できた内容だけを使います。
場面を決めると、撮影指示が具体的になる
- 場面帰宅後の夕食に、一品添えたい
- 求めること食卓へ取り入れる方法を知りたい
- 必要な映像用意する手元と、夕食全体
- 伝える一言今夜の食卓での使い方を示す
撮影前に、冒頭・商品・行動案内をそろえる
場面を選んだら、動画を三つの部分に分けて考えます。
冒頭では、自分の場面だと分かる材料を見せる。 朝食なら朝の食卓、夕食なら他の料理との組み合わせなど、場面が伝わる映像を候補にします。文字だけで説明しなければ伝わらない場合は、映像の選び方を見直します。
商品を見せる部分では、選ぶ理由を確かめてもらう。 具材、分量、用意する工程など、商品として確認できる内容を映します。「おいしそう」だけでなく、その場面で選びやすくなる情報があるかを考えます。
行動案内では、次に知りたい情報へつなぐ。 使い方を詳しく知りたい人に販売店一覧だけを見せても、知りたいことが残ります。商品ページ、食べ方の説明、販売店舗など、動画の内容と移動先をそろえます。
同じ撮影日に複数の場面を撮るなら、完成した一品だけでなく、手元、食卓の引き、包装、商品名が分かる映像を分けて残すと、後の比較を組み立てやすくなります。
取り上げる場面は、担当者の想像だけで決めない
CEPの候補を増やした後は、そのカテゴリーの買い手にとって本当に身近な場面かを確かめます。自社のコメント、問い合わせ、営業が聞いた利用場面、購入者へのヒアリングなどが出発点になります。
当社では、候補を次の四つの観点で整理することを提案します。
| 確認する観点 | 判断する問い |
|---|---|
| 生活者との関連性 | その場面が実際にあると分かる声や記録はあるか |
| 商品との適合 | 商品の特徴で、その場面の求めることに応えられるか |
| ブランドとの結び付き | すでに知られている使い方か、新しく伝えたい使い方か |
| 撮影・提供の条件 | 必要な場面を撮れ、販売時にも同じ使い方を提供できるか |
コメントが一件あっただけで、市場全体で大きな需要があるとは言えません。まずは企画の仮説として扱い、顧客の声や調査で確かめる範囲と、動画広告で反応を比較する範囲を分けます。
大手食品メーカーなら、ブランドごとに違う言い方を使っていても、場面を整理する欄は共通にできます。飲食チェーンでは、店舗の立地や提供時間によって使える場面が変わるため、本部の企画をそのまま全店へ当てはめないことも必要です。
次の動画は、一つの場面をはっきりさせて作る
一つの商品を、朝・昼・夜のすべてに合うと一度に伝えようとすると、短い動画で何を覚えてほしいのかが曖昧になります。まずは一つの場面と、そこで確かめてほしい価値を選びましょう。
その場面を軸に動画を作り、別の場面や見せ方と比較します。反応が違ったときも、場面と冒頭と尺を同時に変えてしまうと、何を次に残すかが分かりにくくなります。検証する問いまで撮影前に決めておくと、映像制作と広告運用がつながります。
インテグロースでは、食の利用場面から動画を企画し、撮影・配信・振り返りまでを一緒に設計します。商品の魅力を、生活者が使う場面で伝えるところから始めます。
この記事は、自社の季節・利用場面を整理した企画記録と、映像・広告の提案設計をもとにしています。冷凍スープの構成表は新たに作った説明用の例であり、配信成果を示す事例ではありません。CEPの概念はEhrenberg-Bass Instituteの資料で補足しています。


